おとな流 気になるニュースに迫る

おとな流 気になるNEWSに迫る  第8回「大学の軍事研究をどう考えるか?」 楠田正博

みなさんこんにちは、おとなナビの楠田です。
 
本日は、第8回「大学の軍事研究をどう考えるか?」というテーマでお話しします。
私は大学4年生になったある日、実家で当時はまだ元気だった親父と向き合っていました。
私の進路について話したのです。

 

その当時は、ニクソンショック・ドルショックの影響で、就職が最悪に近い時期でした。
子供の頃はよく模型飛行機を作ったり、ペンシルロケットを飛ばして遊んでいた私には、流体力学の技術者として、進学して研究者の道を選ぶか、ロケットや飛行機関連の企業に入るか、自衛隊で戦闘機関連の技術将校を目指すかの選択肢がありました。願書を提出したり、試験を受ける前に親父の意見は聞いておこうと思ったのです。
戦闘機乗りだった親父は、自衛隊についても理解し、応援してくれるのではと軽く考えていたことを覚えています。
結果的に他の進路については頷いていた親父でしたが、「自衛隊・・」と聞いた瞬間に、今まで見たことも無いほど激怒して、絶対に駄目だと怒鳴られました。
取り付く島もなかったのです。

 

その後は話も聞いてくれませんでした。

 

親父は現在の東筑高校、昔の東筑中学を中退してお国のためにと志願し、予科練に入隊しました。
過酷な訓練の末、海軍航空隊で偵察機(彩雲)乗りに配属されました。
実際の戦争と言うものを体験し、戦闘や特攻隊で亡くなる仲間を思い、自らも飛行機が墜落して死にかけた経験があったのです。
その厳しい経験から「息子を戦争に近づけたくない」との思いがあったのでしょう。
ただその過酷な話は聞いたことがありませんでしたが、私は自衛隊という選択肢を放棄せざるを得ませんでした。
さて最近防衛省が軍事に応用できる研究に、予算をつける制度を始めました。
これを受けて日本学術会議の検討委員会が、大学での軍事研究についてシンポジュームを開催したとのことです。
これまでは、大学では軍事的研究は行わないとされてきました。
「急に態度を変えると世界中から不信感を持たれる」とか「平和利用が徹底されなければ科学技術は凶器となる」とか、「人間の知はまだ未熟だ」などの反対意見が多数を占めたようです。
もちろん賛成意見もあって、「企業は軍事研究ができるのに大学ができないのはおかしい」とか、「基礎研究と軍事研究の区分けは難しいので、良いのではないか」とか、「防衛に特化すれば良いのではないか」などです。

 

4月に最終報告がまとめられるとのことです。
私も最初に聞いた時は、大学で軍事研究を行うことに違和感を覚えました。
特に親父の顔と、怒鳴られたことを思い出してしまいました。
ただ、中国の軍事的台頭や北朝鮮のミサイルや核兵器による脅しなどを考える
と、攻撃ではなく抑止力として使用することに限定すれば、良いのかなとも思い始めた次第です。
親父との思い出は強い物でしたが、憲法9条と専守防衛を条件になら、考えてもいいのかなと感じるようになったのです。
特に最近訪日したアメリカのマチス国防長官に対する日本側の態度を見て愕然としました。
内閣総理大臣、外務大臣、官房長官、防衛大臣が、列をなして尖閣諸島は安保条約の適用範囲ですかと聞いているのです。
日米安保条約の核の傘に守られていないと、日本はやっていけないんだなと再認識させられました。
抑止力とは、どの国も挑もうとは思わない圧倒的な軍事力か、少なくとも軍事力の均衡が必要です。
永世中立国のスイスが、強力な軍隊を持っていることはみなさまご存知ですよね。
もちろん大学や研究者の自由を尊重すべきですが、軍事研究から宇宙開発、今ではなくてはならないインターネットやGPS(カーナビ)など生活を豊かにする技術も生まれているのです。
ご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんので、アメリカの「オフセット戦略」についてご紹介しておきましょう。

 

「オフセット戦略」とは簡単に説明すると、兵器、システム、作戦を組み合わせることによって、敵国の軍事的優位を相殺(オフセット)して、余りある軍事的能力を確保し、もって抑止力を生み出す戦略だそうです。<第一のオフセット戦略>1950年のアイゼンハワーが実行した戦略で、ソ連の核戦力の優位に対し、アメリカは普通戦力を削減して核戦力を強め、ソ連の優位を相殺した。
<第二のオフセット戦略>
1970年ソ連が核戦力で盛り返してきたので、当時の先端技術や、指揮統制ネットワーク(インターネットに進化)、精密誘導兵器システム(GPSカーナビに進化)によりアメリカが相殺して優位に立ちました。
<第三のオフセット> 国防革新イニシアチブ
2014年中国の兵器近代化や各種戦略によって、アメリカの軍事的優位が低下しているため、宇宙・サイバー・電子戦兵器、ロボット技術、自立型シスム、ビッグデータ、人工知能搭載無人兵器などでアメリカが相殺して優位に立
とうとしている。

 

この第三オフセットの内容を見れば、絶対に大学で研究しないと、科学技術立
国日本を維持できないのではないかと思われるのではないでしょうか。中国が、アメリカの無人潜水艇を略奪したかった理由が分かりますよね。世界の国は互いに国益を第一に考え、憲法第9条で言う正義と秩序を大切にする国は、無いと言ってもいいくらいです。
憲法9条を厳守することを前提に、大学でも軍事研究を認めて常に先端科学技術を創成し、安全で自由で平和な日本を目指してはどうかという考えに至ってしまいました。
国際状況も変わっていますが、さて親父が生きていればどう思ったでしょうか
またみなさまはどう思われたでしょうか?

 

反対される方は多いと思いますが、あくまで私の意見であるとご理解下さい。

 

楠田正博


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