インタビュー

【樋口直美さんインタビュー】 レビー小体型認知症は認知症というより意識の障害  認知症ネット

今までの認知症の「常識」を覆した本、「私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活」(ブックマン社。日本医学ジャーナリスト協会賞書籍部門優秀賞受賞)の著者であり、NHKの認知症キャンペーン特番「わたしが伝えたいこと〜認知症の人からのメッセージ」に出演された樋口直美さん。

この病気が医師にも知られていないため、41歳でうつ病と誤診され、6年間抗うつ剤の副作用に苦しめられています。50歳の時にレビー小体型認知症と診断されましたが、現在では、多くの症状が消えているといいます。適切な治療と様々な努力によって良い状態を保っているという樋口さんに、レビー小体型認知症について、病気との付き合い方について伺いました。

誤診の多いレビー小体型認知症
―― レビー小体型認知症とはどのような病気か教えてください。

ほとんど知られていませんが、多様な自律神経障害が出る全身病です。最初に出る症状も大きな寝言、パーキンソン症状、うつ、幻視など人により様々。高齢でアルツハイマー病を合併される方は多いですが、そうでなければ記憶障害など認知症症状が、中々出ません。そのためによく誤診されます。

頭がしっかりしている時と意識レベルが低下する時があり、薬の副作用が出やすいことも特徴です。幻視やパーキンソン症状は、最期まで出ない人もいて、症状にも進行速度にも個人差があまりにも大きい病気です。

レビー小体型認知症=認知症、によって起こる問題
―― レビー小体型認知症において、一般的に言われていることと事実との最大のギャップを教えてください。
レビー小体型認知症は認知症というより意識の障害だと自分の体験から感じています。
認知症に回復はないと言われていますが、私の症状は、改善しました。それは認知機能の低下が、脳細胞の死滅ではなく意識障害から起こっていたからだと思います。この病気は、薬の副作用、ストレス、天候、疲労など体の状態によって簡単に意識障害が起こります。天候は変えられませんが、それ以外のものは、取り除くことができます。初期はもちろん、進行した方でも認知症とは呼べない状態にまで回復する可能性が高いのが、この病気の特徴だと思います。この病気を発見した小阪憲司先生も「この病気は、認知症症状が中々出てこないために誤診がとても多い。認知症症状が出る前に診断・治療をすれば、認知症になる時期を遅らせることができるし、認知症にならない可能性もある。病名が誤診の原因ともなっているので、病名から”認知症”を取って”レビー小体病”と変えたい」と言われています。
―― 樋口さんの身体には実際にどのような症状が現れたのですか。

発症前から、レム睡眠行動障害といって、殺される悪夢を見て叫ぶというということが時々ありました。41歳の時に、不眠・頭痛・倦怠感で精神科を受診し、うつ病と誤診されてしまい、その後6年間、抗うつ剤の副作用に悩まされました。薬を止めて元気になり、低下していた脳の機能も戻りました。

しかしその後、運転中に道路わきの資材や看板が人に見えるといった目の錯覚が現れて、ある日錯覚にしてはあまりにも鮮明に見え過ぎることに疑問を持ち自分で調べ、レビー小体型認知症という病気を疑いました。しかしまた錯視(幻視の一種)は見えなくなりました。疑惑、不安、葛藤がありましたが、受診には至りませんでした。その約1年後、また錯視が現れたときに確信に至りました。

幻視や幻聴などの幻覚は、異常な精神状態で起こるBPSDと説明されますが、私の場合、正常な意識・思考力・精神状態の時にしか起こらず、意識障害を起こしている時には1度も起こっていません。この病気の幻覚は精神症状とは違うものと考えています。

※何もない所に見えるのが幻視。何かが違うものに見えるのが錯視。

病気と上手く付き合うために、「病気を知る」
―― レビー小体型認知症は、よく介護の難しい病気と言われますが、そうなのでしょうか?

この病気は、認知症専門医にもまだ十分に知られていない病気です。誤診が多く、正しく診断されても処方薬で悪化している場合もよくあります。抗認知症薬も一人ひとり適量が違うのです。薬の副作用で興奮している状態を病気の症状のように説明されています。

よく勉強し、適切な治療とケアをしている家族に伺うと、長年進行していないという方が少なくありません。治療とケアによって天と地ほどに分かれてしまう病気だと思います。

幻視も実際に本物として見えているから正常に反応しているだけですが、狂人扱いされてしまいます。それは本当に辛く、そのストレスで悪化している場合も多いと思います。

進行しても思考力は残っているのに、反応が遅かったりすると”何もわからない人”として扱われ、本人はとても傷ついています。

―― では、どのように病気と付き合っていけばよいのでしょう。

一番大切なのは病気をよく知ることです。医師にお任せでは、治療は決して上手くいきません。失神など症状が多様ですから、症状を一通り知れば、すぐ気づけますし冷静に対処できます。どんな薬に気をつけなければいけないのかも必須の知識です。処方薬や市販薬で悪化する悲劇も防げます。よく観察し、記録をつけることも大事です。

レビー小体型認知症は無知により悪化し、それが病気の症状のように誤解されています。アルツハイマー病とはまったく違うケアや注意が必要ですが、希望の持てる病気です。

病気を知り、ストレスを避け、笑うことが症状改善につながる
―― 今はかなり樋口さんの症状が改善されたということですが、今の状態を教えてください。
意識障害を起こすことがとても少なくなったために、それに伴っていた認知機能低下もほとんどなくなっています。自律神経障害はありますから、心身の疲れを避けるなど体調管理には気をつけています。臭覚障害、時間感覚の低下などがありますが、思考力や記憶力の低下はありません。幻視、幻聴、幻臭などの様々な幻覚もずっと消えています。
―― 症状が改善した一番のきっかけは何でしょうか。

副作用に気をつけた慎重で適切な治療はもちろんですが、人と会って楽しく笑い合うことが症状を一番改善すると実感しました。反対に、ストレスは悪化の元です。叱られたり見下されたりするのは最大のストレスです。ですから、ストレスを避けて、安心できる人間関係の中で楽しく笑って過ごせば、良い状態が長く保てると思います。

どんなに小さなことでもよいので、人の役に立っているという自信も重要です。役割や生きがいがあること、自分は自分のままでいいんだ、失敗しても笑顔で受け入れてもらえると思えることで誰でも改善していくと思います。世話される一方の生活は、症状が進んだ方にとっても苦痛だと思います。病人ではなく一人の人間として接して欲しいし、人に喜ばれることをしたいという気持ちは、病気や障害のあるなしに関わらず誰でもずっと持ち続けています。

―― 最後に、樋口さんの書かれた書籍についてのコメントをお願いします。
レビー小体型認知症の症状やその時々の気持ちが詳しく記されていますが、認知症と診断されるとはどういうことなのか、認知症とは本当はどういう状態なのかを知ることができると思います。同時に人生最大の危機にあった時に、どうそれを乗り越えるかというヒントもありますので、あらゆる脳の病気、難病、障害、また病気以外の大きな困難にあったときにも参考にして頂けるかと思います。
樋口直美さんプロフィール
1962年生まれ。
30代後半から幻視を見た。
41歳でうつ病と誤診される。
薬物治療で重い副作用が生じたが、約6年間誤治療を続けた。2012年、幻視を自覚し検査を受けたが、診断されなかった。
2013年、症状から若年性レビー小体型認知症と診断され、治療を始めた。
2015年1月、東京での「レビーフォーラム2015」に初登壇した。
2015年7月『私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活』(ブックマン社)を出版。
2016年現在、空間認知機能障害、注意障害など様々な脳機能障害、幻視、自律神経障害、意識障害などがあるが、思考力は(意識障害を起こしていない時は)保たれている。本書は、日本医学ジャーナリスト協会賞の書籍部門で優秀賞(2015)受賞。NPOオレンジアクト2015年認知症フレンドリーアワード入賞(執筆を含めた活動に対して)。
認知症ねっと


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